Grassland.

まるで踊るように。

わたしは誓いのキスができなかったのだ、あの時に。

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目を覚ますと世界が変わっていた。
部屋、置いてあるもの、配置、なにもかも一緒なのにまるで別世界に来たようだった。
こういうときが、たまにある。ほんとにたまに。
たとえば、すきな誰かができたとき。たとえば、ずっともやもやしていた問題が誰かの一言でぱぁっとなくなった次の日。たとえば、新たな道を踏み出したその最初の日。
そういうとき、世界が急にみずみずしくなって、なにもかもがくっきりと見えて、無敵だ!!!というな気持ちになる。
昨日の場合は、ドラマ「おっさんずラブ」の最終回を見たからだと思う、あきらかに。
わたしの人生に大きく関わる3つめのドラマとなった、おっさんずラブ
もし、これを読もうとしてくれていて、おっさんずラブ見ようと思ってるけど最後まで見てないよ~、という方がおられたら申し訳ないですが回避してください。
まったく見てない方は、大丈夫です。



1、おっさんずラブに学ぶ。
おっさんずラブの主人公春田は、めちゃくちゃ優柔不断で、素直でお人好しだけど、自分の本当の気持ちがわからないまま流されてしまうところが多々ある。
そんな彼は、なんだかんだ(もう本当にいろんなことが)ありつつ、最後にはなんとなくでプロポーズまでオーケーしてしまう。若干の違和感は抱きつつも、そのまま結婚式へと進む流れに逆らえないでそのまま当日を迎える。
こうやって書くとただのめちゃくちゃなやつにしか見えないな。笑
そして迎えた当日。「それでは、誓いのキスを」と言われたときになって初めて、その相手とキスができない自分に気付く。
そこで本当に大切な一人に、やっと気が付く。
というわけで最高のハッピーエンドとなりもうめちゃくちゃ幸せに朝を迎えた私ですが、今日、思った。
春田みたいに、結婚式場まで流されてることって日常のなかで結構あるんじゃないだろうか。

それはなにも恋愛に限らず。いろいろな面で。

春田は、なんとなくプロポーズをオーケーしてしまった相手ことを、尊敬していたし、あこがれていたし、頼りにしていた。人間としてはすごく好きだったはずだ。
でも、キスはできなかった。そういう相手ではなかった。ただそれだけ。
わたしが仕事として今までやってきたこと。きらいじゃない部分もたくさんあった。流れにのってきていたのかもしれない。そのままいけば、安泰していたのかもしれない。
でも、では誓いのキスを、と言われたときに、あ、あ、ちがう、これじゃない、と思ったんだろう。きっと。

キスができないでいる春田に、その相手はこういった。
「はるたん、神様の前で嘘はつけないね」
そうして、春田が本当に好きな彼のもとへ、気丈にも送り出してくれたのだ。

わたしたちも、自分を騙すことはできても、自分に嘘をつくことはできないんじゃないかと思う。だってほんとは、“自分”は知っているから。騙している間は”騙されてくれている”だけに過ぎないんじゃないか。きっと、そうやって待っている。
式場から飛び出して、抱き着きにきてくれることを。

2.海に出よう。
だけど、「今どうしてるの?」と聞かれると正直困ってしまう。ずっと家にいるわけではないけれど、仕事を始めたわけでもなく、かといって遊びほうけている意識もなくてどちらかといえば収入にならない仕事(勉強)をしている感覚はあるけれど、端的にいうと遊んでいるだけなのかもしれない。なのでそういうことをむにゃむにゃと説明するしかないのだけれども、うまく伝えられない。
わからない。

でもわたしが今言えるのはこういうことだ。
「海って、広いよ!」

仕事を辞めることは、ずっとあてのない航海に出るようなものだと思っていた。おおげさかもしれないけれど。
だけど、実際に出てみると、海は広かった。
広かったんだ。
水面は太陽が反射してきらめいている。向こうには、ただただ広い水平線。
知らなかった。きっと広いだろうな、きれいだろうな、と思っていたけれど、こんな
海が本当に眼下に広がる世界があるなんて。
海は、荒れる日もある。雨の日もある。だけども、そんなの陸地にいたってあるじゃないか。
広い、海だった。
いったいどこを目指すのか。どうやって飢えをしのぐのか。
わからない。
こんなこと言ってると怒られるかもしれない。
だけど、あのとき誓いのキスができなかった。春田が式場を飛び出して牧を捜しに行ったように、わたしも式場を飛び出して船に飛び乗った。
あざやかな、青!

大好きな大島弓子さんの漫画「毎日がなつやすみ」という話の最後に、こんな一文がある。

考えてみれば、あの日あたしは、まぶしい永遠の夏休みを手に入れたのだと思う。
計画する。実行する。失敗する。出会う。知る。発見する冒険とスリル。自由と喜び。
今、私は海外出張から戻ったところだが、海で思いきり泳いだ後のような気分がしている。

これがすごく理想で、大好きな言葉。

ほんとうはもうなにも言わないほうがいいかもしれない。数日後に「あ、やっぱちがったわ」ってなるかもしれない。不安とか、焦りとか、なにもないわけはない。
ないけれど、もうしらん。
今の感情は、今だけだ。
今のことばも、今だけだ。
今を愛するって、こういうことだといいな、と思う。


3.ペンネンネネム in the forest にある電話。
先日、須磨のペンネンネネム in the forest という、絵本はもちろん、絵本をテーマにしてお店の雰囲気やメニュー作りをされているカフェに行った。
とてもすてきなカフェだった。
(須磨のペンネンネネムは完全予約制ですが、おすすめです)
そのなかのスペースの一角に、電話がおいてあった。
そこにはこう書いてあった。f:id:yuki6225:20180603230053j:plain


「これは べんりでんわ とおくのともだちと おしゃべりできる」

この、電話をみんなが持っている時代に。
ここのべんりでんわから電話をかけるとしたら、誰にかけようか?
ずいぶん悩みました。
かけるなら夜がいいなぁ。夜中の、でんしんばしらの下で。

誰に、でんわをかけたいですか?