Grassland.

まるで踊るように。

青春18きっぷの旅〜京都からおうちへ〜

最終日。

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「都野菜」という、京都のお野菜がたくさん食べられるお店のモーニングへ行く。
万願寺がめちゃめちゃおいしくて、感動した。
野菜とおかゆと、ちょっとだけうどんを食べただけなのに、お腹がぽんぽんのぱんぱんになってしまった。 
お腹がいっぱいになると、思考も動きも心もにぶる。やっちまったー、と同じしっぱいをする。




京都駅へ行くためにバスを探す。が、京都はバス停がたくさんあって、どのバスでも京都駅に行ってくれそうなのに、「京都駅行き」と書いてあるバス停がない。
都野菜に行ったときに近くに京都水族館(京都駅の近くにある)があったので歩いていくか、とあるき出す。
この旅でどんどん増えていった荷物を持って歩く。


パン屋さん。京都らしい建物のゲストハウス。すごく立派な建物だけど、「147年間ありがとう」と大きく貼ってあった小学校。龍谷大学の立派な図書館。すぐに汗が吹き出してくる。



と、次のバス停が見えてくる。


これは京都駅へ行くのかな…と時刻表をのぞき込んでいると、ちょうどバスがやってきたので、どこ行きかもわからないまま飛び乗る。
車掌さんに聞こうとするけれど、韓国人らしい若者たちのでっかいキャリーバッグが道を塞いでて前に行けない。
困ったな…と思っていると、その中の一人が「You ○○○?」と前を指さして、仲間に合図をし、道を開けてくれた。
とっさのことに「サンキュー!」も言えないままペコリと頭を下げ、前に行かせてもらう。
無事京都駅行きなことを確認し、席についてホッとしてから急にさっきの彼らへの感謝の気持ちがこみ上げてきた。

かばんをぎゅっと握りしめ、サンキュー、と思いを飛ばす。


遠くへゆきたい。

コインロッカーに荷物を預け、「ノムラテーラー」という大きな布屋さんを目指した。
とにかく今は布がみたい。
自分が着たい服が、知りたい。


と、その途中に本屋さんを見つけて立ち寄った。
本を探していると、長田弘さんの「深呼吸の必要」という本を見つけた。

懐かしい。短大時代に、先生が貸してくれた本だ。

ぱらぱらめくる。そこには、子どもから大人になるあいだのことを書いた詩が何編かにわたって書かれていた。

その一つに、「遠くに行きたい」気持ちについてかかれている詩があった。

小学生の間は、たしか自転車で行ける区間が決められていて、そこから先に子どもだけで自転車に乗って行くことができなかった。
だから、わたしにとって「遠く」はその区間を超えたところにある、憧れの地だった。


ほんとうに素敵な詩なのでそのまま読んでほしいのだけれど、その詩の最後にこんなことが書かれていて、ずん…ときた。


“”子どものきみは、ある日ふと、もう誰からも「遠くへいってはいけないよ」と言われなくなったことに気づく。そのときだったんだ。そのとき、きみはもう、一人の子どもじゃなくて、一人のおとなになってたんだ。”

長田弘 「深呼吸の必要」 あのときかもしれない 四 より)


終わりははじまり。

ノムラテーラーにはほんとうにたくさんの布が置いてあってびっくりした。だけども「これ!」という布を探すのはむずかしかった。

京都でおいしいとされているコーヒーショップに寄って帰りたかったけど、ノムラテーラーの店内がめちゃくちゃ冷えていたのと、ぽんぱんなお腹を抱えたままだったわたしは、そのまま京都駅に戻った。

帰りの電車を調べると、青春18きっぷの一日分の料金とほぼ変わらないことがわかった。
それなら、今日は現金で払っておけば、また違うときに一日旅ができるかもしれない。
しばらく悩んだけど、やっぱり青春18きっぷで帰ることに決めた。今回の旅は今回で終わらせるのがいい、とおもった。

終わるとおわり、ではない。今はまだわからなくても、またそこから始まるのだ。




電車内で、先ほど買った本を開いた。
高橋久美子さんのエッセイ、「いっぴき」。

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高橋久美子さんは、チャットモンチーというバンドのドラムをされていたのだけれど、 2011年に脱退をし、言葉に向かう活動をいろいろとされている。
チャットモンチーは好きなバンドで、久美子さんが脱退するのは寂しかったけど、ただ、そうなんだな、と思った。
そしてチャットモンチーは今年の7月をもって解散した。
(彼女たちは「チャットモンチーの完結」と言っている)

最初にそれを知ったときはもちろんさみしかった。
けれど、ずっと変身を続けてきた彼女たちにとって、それは必要な変化なんだなぁ、と思った。

続けることは、変わっていくことだ。

生きることは、とどまらないことだ。

出発前のわたしと、旅から帰って来たわたしとでは何かがちがうだろう。
それは経験を通してたくましくなったとか、旅の思い出を語れるとかそういうことではなく(そういうこともあるかもしれないけど)、昨日のわたしと今日のわたしが違うように、一分前のわたしと今のわたしが違うように、ただ変わっていくのだ。

一年後が想像できないように、一ヶ月後も想像できない。
それどころか一週間後の自分さえ何をやって何を考えてるのかわからない。

もう、それくらいに変化の早い地球で、それでも時間にそって生きている。



たとえなにもうまく語れることのなかった旅だとしても。車窓からたくさんの夏を感じた、というわたしにしかわからない旅だったとしても。

終わりははじまり。次のはじまり。



こうして、わたしの「平成最後の夏、青春18きっぷの旅〜兵庫から千葉へ〜」は完結した。


またはじまる“何か”にのって自分の頭では想像できない、それさえ超えたどこかへ行けることを自分に期待して、今日はゆっくり眠ろう。

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#青春18きっぷの旅
#これにて完結